各国のパラサイトシングル事情 その1


『パラサイトシングル』を上梓してから20年。

日本で話題になった当時は、いい年をした適齢期の独身者が、
親元から自立しないなんて、日本独自の現象で、
特に欧米社会ではありえないと言われた。


〝流行〟のパラサイトシングルの実践者として、
当時はテレビ番組で討論するゲストに呼ばれたこともあったが、
必ず〝パラサイト潰し〟を仕掛けてくる知識人がいて、
私に対してまるで幼子を扱うように
「どうして、いまだに一人暮らしができないの?」
と諭すように言われたり、頭ごなしに
「けしからん! おまえのような甘い考えのやつがはびこるから、
社会が弱体化するんだ」
みたいなことを言われて叱られた。

たしかに、パラサイトは寄生虫である。
社会に寄生して、社会資源を食い尽くす輩である。
当時、パラサイトをなんとかせにゃあかんと思っていた人たちは、
私達をなんとか矯正して、ちゃんとした大人にしようと、息巻いていた。
結婚させて子どもを産み育て、次世代につなげていくように。

しかし、20年経ったら、どうなったか。
相変わらず、少子化・晩婚化が進んでいる。
おまけに超高齢化社会で、年寄りが増えて若者がいない。
そんなひずんだ社会構造になってどうしようもない。

そして、海の向こうに目を向けたら・・・
日本以外でもパラサイトシングルは、同じ時代に現れていて、
顕在化していた。

実は、2000年の初め、フランスに旅行の途中、
友人の家に立ち寄ったのだが、彼女の家では 
赤ちゃんが生まれたばかりの娘夫婦と、
彼女と同棲中の息子が一緒に暮らしていた。

彼女は私と同い年で、キャリアウーマンとして収入もあり
パリの郊外にメゾネットタイプのかなり広いアパルトメントを購入して
棲んでいた。
部屋がたくさんあるから、子ども達は出ていかないのである。
「子どもたちはまだ稼ぎが少ないし、今、若い子は仕事がなくて大変なの。
結婚しても、家から出ない子は他にもいるわよ」
と彼女は言った。

パラサイトシングルならぬ親元にパラサイトダブル、
赤児もいたらパラサイトダブルだけど、
フランスでもそんなことになってるのかと驚いた。

でも、日本に帰ってその話をしても、
フランス人=自立のイメージが強いので、
特殊な例はではないかと言われた。

もっと、長く滞在して取材をすればよかったが、
20年前はまだ、ネットの情報も発達しておらず、
リサーチが今ほど簡単ではなかった。

フランスで、その後すぐに、
パラサイトシングル現象が話題になった。
2001年に公開されたエティエンヌ・シャティリエ監督作品の
『タンギー(Tanguy)』という映画だった。

28歳の秀才で、それなりに稼ぎがあるのに、
自立できない青年タンギーを主人公にしたコメディ。
そんな息子をなんとか自立させようと、
作戦を展開する両親のドタバタが面白く描かれ
フランスで大ヒットした。
(なぜか、日本では公開されなかかった・・・)

つい最近もフランスのテレビで再放送されていたようだ。
私も一度、見たことがある。
フランス人の恋愛観、結婚観と、メンタリティの違いなどあって
日本人のパラサイト事情と全く同じではないが、
人間、こと親子関係については、人種が違っても、言葉や文化が違っても
同じなんだなと実感した。

同名映画のヒットにより
「タンギー・シンドローム(Phénomène Tanguy)」という言葉が流行した。
そして、
〝タンギー族(Les enfants Tanguy) 〟という言葉は
フランス語圏では、けっこう浸透している感もある。

今日は、まだ入り口ですが、
続きはまた・・・
ご精読ありがとうございました。

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